バドミントンに限らずスポーツをしている方から、「怪我から競技に復帰する際、再発予防のために何をしたら良いですか?」と良く質問を頂きます。
こういった質問をしてくださる方に「ご自身はどう思いますか?考えてみてください。」とお聞きすると、
「怪我をした部位が弱いから鍛えた方が良いと思う」もしくは「怪我をした部位が硬いから柔らかくした方が良いと思う」という答えが返ってきます。
しかし、怪我をした部位に問題があると安易に考えるのはとても危険です!
そこで今回は、怪我の原因が怪我をした部位とは別の部位の可能性もあるという事を事例と共にご紹介していきたいと思います。
事例紹介
私自身も学生の頃から怪我が多く苦労しました。その都度その場しのぎの治療しか受けずリハビリをしっかり受けなかったり、自分の身体と向き合うことができずに痛い所をかばってプレーを続けて違う部位をまた痛めるを繰り返していました。
こんな私のようにならないためには、なぜ怪我をしてしまったのか、どうしてその部位が痛くなるのかを知る事が大切です。
まずは私が関わったクライアントの事例を紹介していきます。
ケース①40代男性・腰の痛みの原因が肩にあった
この方は日常生活で腰の痛みを感じることはなく、バドミントンの練習後に腰が痛くなるということでした。
姿勢や動作をチェックしてみると肩の可動域が狭く正しくバンザイができていませんでした。
そのため、バドミントンのオーバーヘッドストロークの際に必要以上に腰を反っていたため腰の筋肉に過剰に負担がかかっていました。
このケースの場合腰が弱い、体幹が弱いと考えて腹筋や背筋などを鍛えても肩の可動性を改善しなければ、一時的に痛みが軽減されることはあっても根本改善には繋がりません。
また腕を無理やり上げて高い打点で打とうとし続ければ肩そのものを痛めるリスクも高いです。
ケース②10代(高校生)女性・腰の痛みの原因がオーバーヘッドストロークのフォームにあった
このケースでは身体的な問題よりもオーバーヘッドストロークのフォームに原因がありました。
具体的には、右利きでオーバーヘッドストロークで半身になる際の右足の向きが前を向いているのが原因でした。
半身になる際の右足が前を向いているとテイクバックの際に必要以上に腰に捻りのストレスが加わります。
それに加えてこの選手の場合は細身でアタック力に課題があり、スマッシュをもっと早く打ちたいがためにテイクバックが大きくなり、より大きなストレスが腰にかかっていると考えられました。
ケース①と同様、腹筋や背筋を鍛えることで一定の効果はあっても半身になる際の右足の使い方を改善しなければ腰に負担がかかるのは間違いありません。
また、フォーム改善に取り組まずにプレーを続けた場合、しっかり半身にならないことで手打ちになり手首や肘に負担がかかったり、右膝に必要以上の捻りのストレスが加わり膝を痛めるリスクもあると考えました。
ケース③60代女性・膝の痛みの原因が股関節にあった
日常生活で右膝に痛みを感じるということで病院を受診し、変形性膝関節症と診断されました。その後、再生治療を受け膝の状態は改善されているのにまだ右膝の痛みが消えないと相談を受けました。
身体のチェックをしてみると、右の股関節の動きが悪く屈伸の動作で右膝が内側に入る(ニーイン)ことで重心が右側により体重が右足にかかっていました。
また、股関節にも違和感を感じていたので検査してもらうと股関節が炎症していました。
病院ではもも前の筋肉(大腿四頭筋)をつけるように言われるようですが、この方のケースではいくらもも前の筋肉を鍛えても膝が内側に入ってしまう動きの癖を改善しなければ根本改善には繋がらないでしょう。
病院ではプールでのウォーキングも推奨されていますが、ただ歩くだけよりは身体の状態に合わせた動きを取り入れるとより効果的です。
怪我をしないためにできること
いくら怪我の予防をしていても100%防げるとは言い切れません。それでも正しい予防をしていれば100%に近づけることはできます!また、正しい怪我予防をしていればパフォーマンスアップに繋がる可能性もあります。
自分の身体と向き合う
私はこの部分が学生時代できなかったので、怪我を多くしてきました。コロナウイルスの影響でできた時間を活用して一度しっかりご自身の身体と向き合ってみましょう。
自己分析してみる
まずはご自身の身体の自己分析をしてみましょう。
バドミントンのプレーを自己分析するように、
- どこがどんな時に痛くなるか?
- どこの筋肉が柔らかいのか、硬いのか?
- どこの筋肉が強いのか、弱いのか?
- 姿勢の特徴は?
- ウォーミングアップやクールダウンをしっかり行えているか?
などだけでも一度考えてみてください。
そしてこのご自身の自己分析結果と身体の専門家からみた状態が一致しているかをチェックできると、より深くご自身の身体を知ることができます。
監督・コーチ・指導者と一緒に考える
ケース②のように痛みの原因が技術にあることもありますので、フットワークやフォームに問題がないか技術指導者の方に相談したり、チームメイトに見てもらったり、ビデオを撮って一緒に分析するのも効果的でしょう。
ただし技術指導者は身体の専門家とは限らないので注意しましょう!
身体の専門家と一緒に考える
ケース①や③のように身体に問題がある場合はやはり専門家に一度相談するのがお勧めです。
「やっぱりここが原因だったか」となるかもしれませんし、「えっ、こんなところが」となるかもしれません。
技術だけでなくご自身の身体に専門家と一緒に向き合うことができれば、怪我予防だけでなくパフォーマンスアップに繋がります。
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怪我予防の意識を高める
- 痛みが出たら治療する
- 痛みを取るだけの治療を受ける
- ケアを他人任せにする
など、その場だけの対策ではなく普段から予防の意識を高めることが大切です!
- ウォーミングアップやクールダウンをしっかり行う
- バランスの良い食事、十分な睡眠を意識する
- 柔軟性や筋力向上に取り組む
など、自己分析で足りないと感じた部分と普段から向き合うことが大切です。
その上でトレーニングやストレッチなど具体的にどのようにすればいいのかわからない場合には専門家の力を借りるのが一番の近道です。
怪我をしてしまったら
怪我をしない、痛みなくプレーできるのが一番ですが、万が一怪我をしてしまった時の対処方法を簡単にご紹介しておきます。
慢性的な痛みの場合
慢性的な痛みをほおっておくと突発的な怪我に繋がりかねませんので、何が原因で痛みが生じているかを分析する必要があります。
また、痛みを感じながらプレーを続けていると痛い部分を知らず知らずの間にかばって別の部位を痛めてしまうこともあるので注意が必要です。
既に怪我をしていないか確認するためにまずはレントゲンやMRIの設備が整った整形外科を受診しておくと安心です。
特に異常が見つからなかった場合は筋肉や身体の使い方などに原因がある可能性が高いので、身体の専門家に相談すると良いでしょう。
かかりつけの整骨院や治療院があれば相談してみるのも良いですね。最近では整骨院などでもトレーニングを提供する所が増えてきましたが、整骨院や治療院は必ずしもトレーニングの専門家という訳ではありませんので注意しましょう。
突発的な怪我の場合
ますは応急処置をしっかり行い、速やかに病院を受診しましょう。
万が一怪我をしてしまった場合は、RICE処置を速やかに実施して病院を必ず受診しましょう。
RICE処置とは、
- Rest(安静)
- Icing(冷却)
- Compression(圧迫)
- Elevation(挙上)
の頭文字をとって名付けられました。具体的には、怪我をした部位をなるべく動かさず安静にし、氷嚢などを活用して氷で患部を冷やし、包帯やテーピングで患部を圧迫し、患部を心臓より高い位置に挙げることを言います。
最初に受診する病院は整骨院や治療院ではなく、レントゲンやMRIなどの設備が整った整形外科を受診しましょう。
受診後は医師の指示を聞き、リハビリをしっかり受けてください。リハビリと並行して行きつけの整骨院や治療院などに行くのはOKです。
「痛みがなくなった=怪我が治った」ではありませんのでリハビリは必ず最後まで受けましょう!
プロアスリートが大怪我から予想より早く復帰できるのはしっかりとリハビリを行い怪我と向き合いトレーニングやコンディショニングを行なっているからです。一般の方や学生の場合、アスリートの様に専属のトレーナーがいる訳ではありませんので、毎日コツコツで良いので決められたリハビリをしっかり行い、バランスの良い食事と十分な睡眠も大切ですので意識して取り組みましょう。
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まとめ
今回は怪我の原因が怪我をした部位とは別の部位の可能性もある事について事例を交えてご紹介しました。
スポーツをする上で怪我はしないのがベストですが、怪我をしてしまった後に怪我を繰り返すことがないよう、なぜ怪我をしてしまったのか原因を特定し対策する事がとても重要になります。
怪我をした部位・痛い部位は被害者で、原因となる部位(犯人)は他の部位にある可能性があるという事は覚えておいてください!
この記事が怪我の予防を考えるきっかけになれば嬉しいです。
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